無料-
出会い-
花-
キャッシング
2007.5.20
岐阜やん。
鮮やかに匂っている美濃紙の表紙を開くと
美濃和紙
少年 (谷崎潤一郎/新潮文庫『刺青・秘密』)
何十年立ったか判らぬ木版版の極彩色が、光沢も褪せないで鮮やかに匂っている美濃紙の表紙を開くと、黴臭いケバケバの立って居る紙の面に、旧幕時代の美しい男女の姿が生き生きとした目鼻立ちから細かい手足の指先まで、動き出すように描かれている。
美濃は古くから和紙の生産が盛んな土地。例えば、現存する最古の和紙は、正倉院に保存されている戸籍(大宝2年・702年)なのだが、それが美濃で漉かれた和紙。
古代から品質がよいことで評価されており、諸国に広く流通していたことから、美濃紙という言葉はあたかも和紙という言葉の代名詞のように使われていた。例えば、ステープラのことをホチキス、絆創膏のことをバンドエイド、宅配便のことを宅急便と言うが如しである。
奈良の時代から使われていた言葉で、これはつい最近まで一般的に使用されていた。そう、障子の文化が衰退する頃まで。日本の生活様式が、今のように変化するまで。
だから、ちょっと昔の小説などにはちょこちょこ登場していると思う(思う、と言うのは確実に出典を明示できないから)。
品質の良いものが大量に生産されていたために、岐阜では和傘や提灯の生産も盛んになった。
ちなみに、今は美濃和紙と言えば、美濃市が主産地(というか有名)だが、奈良時代の主産地は西濃地域であった模様。どうやら、この地域に国分寺があったりして、需要があったためらしい。
さらにちなみに、和傘や提灯の主産地は岐阜市である。こちらは、武士の生活を支える内職だったっということのようである。だから、美濃市ではなく岐阜市が主産地なのだね。
生活様式の変化により、これらの伝統工芸は、今や産業としては(数字の上では)小さくなってしまったが、それでもやっぱり岐阜の大切な文化なのである。
[PR]動画